しかし、なかには有毒なFXも多い。また、FXの表面にはクチクラ(角皮)、気孔、パピラ(乳頭状突起)、毛などが存在することがある。ワタの繊維は表皮細胞が細長く伸び出したものである。〔2〕へそ(臍) 種子の表面を観察すると、へそとよばれる特別な部位のあることが多い。これは、胚珠の基部である珠柄が子房内の胎座(裸子植物では種鱗(しゅりん)など)から離れて落ちた痕跡(こんせき)であり、その形と大きさは種類によってさまざまである。倒生胚珠(珠孔が珠柄と同じ側にあるもの)からできた種子では、珠柄の一部がFXに沿着しており、へその近くに稜(りょう)のような隆起となっていることが多い。こうした種子では、胚珠の発達中に珠柄付近の組織が張り出し、FXの一部または全部を覆うことがある。このような構造を仮FX(種衣ともいう)とよぶ。被子植物ではキブシ(図B)のほか、スイレン、ニクズクなどにみられ、仮FXは本来のFXよりも柔らかく、不規則な形となる。裸子植物ではイチイ、カヤ、イヌマキなどに多肉質の仮FXがみられる。仮FXのなかには、鳥や昆虫による種子散布に役だつものがあると考えられているが、その機能と起源については、まだ不明な点が多い。〔3〕珠孔 種子の表面にはもう一つの特別な部位として珠孔がある。その位置は直生胚珠のものではへその反対側、倒生胚珠のものではへそのすぐ近くである。珠孔は胚珠における珠皮の開口部で、受精のときに被子植物では花粉管が、裸子植物では花粉が侵入した場所である。しかし、成熟したFXでは完全に閉鎖され、外見からでは確認するのが困難なことが多い。こうした珠孔の周りに特別な組織が発達することがある。トウゴマなどでは、珠孔を覆ってカルンクル caruncleとよばれる柔らかい突起ができ、脂質を分泌する(図C)。アリがこの部分を好み、種子を運搬するため、散布に役だつといわれる。また、ツユクサでは胚珠の成長の途中で珠孔の周囲の珠皮だけが早く堅くなる。しかし、他の部分はその後も成長を続けるため、珠孔付近にくびれができ、胚はそのくびれの中に入っている(図D)。発芽のときにはくびれた部分のFXが蓋(ふた)のように外れ、そこから主根が出てくる。被子植物にはFXの先物取引 が張り出して翼(よく)となり、風で飛ぶものがある(キリ、ヒメシャラなど)。裸子植物のマツなどの種子にも翼がついているが、これは種鱗の組織の一部がはがれて種子に付着したものである。 2. 栄養組織種子における栄養組織として胚乳の語が使われるが、これには二つの意味がある。広義には種子に含まれる胚以外のすべての栄養組織をさすが、狭義には被子植物の内胚乳をさしている。ここでは狭義としてとらえ、以下、種子における栄養組織に触れる。〔1〕裸子植物 裸子植物の成熟した種子の栄養組織は、雌性配偶体(前葉体ともいう)からできている。雌性配偶体の発達は、まず、若い胚珠の珠心(先物取引を占める柔組織)の中に大胞子母細胞ができ、これが減数分裂して核相n(半数世代)の細胞ができる。この細胞は、初めのうちは核だけが繰り返して分裂し、細胞壁をつくらない、いわゆる自由核分裂を行うが、大きな1個の細胞の先物取引には液胞があり、周辺部には数千個の核ができる。その後、周辺部から細胞壁の仕切りができ、しだいに先物取引にまで及んでいく。このころ、珠孔に近い部分に数個の造卵器がつくられ、その中で卵細胞が受精して胚発生が始まるが、雌性配偶体はその後も成長と肥大を続ける(図E)。成熟した種子では、珠心は雌性配偶体によって吸収し尽くされ、死んだ細胞からなる薄膜状の組織として残るだけである。その内側の雌性配偶体が種子の体積の大部分を占め、ここに貯蔵細胞が詰まっている。ただし、先物取引部は後述する初期胚によって消費され、空洞ができているのが普通である。貯蔵物質はソテツやFX ではデンプン粒が多く、マツなどの球果類ではデンプンもあるが、脂質とタンパクからなるアリューロン粒が主体である。イチョウの種子(銀杏(ぎんなん))が秋に落下するとき、FXの厚壁組織を割ると、中から薄膜に包まれた緑色で球形の組織塊が現れる。これが雌性配偶体であり、この部分を食用とする。このなかには初期胚も含まれているが、受精直後であるため、まだきわめて小さい。その後、種子が地中に埋没すると、胚は雌性配偶体を消費して成長を続ける。そして、翌春の発芽の直前には、雌性配偶体はほとんど吸収し尽くされることとなる。〔2〕被子植物 被子植物の種子の栄養組織には外胚乳(外乳)と内胚乳(内乳)とがある。外胚乳は、珠心の組織の一部が受精後にもさらに発達して栄養を貯蔵するようになるもので、アカザ科、スイレン科などにみられる(図F)。スイレンでは成熟した種子の体積の大部分を外胚乳が占め、その細胞は肥大して、中にデンプン粒をもっている。珠孔寄りの部分に薄膜状の内胚乳があり、胚はその中に包まれている。内胚乳は、被子植物のほとんどすべてがもつもっとも主要な栄養組織である。被子植物の雌性配偶体は胚嚢(はいのう)とよばれ、通常は8個の自由核をつくる。そのうちの先物取引にある2個の核が合体して極核となる。花粉管のもっている2個の精核のうち、1個は珠孔寄りにできた卵細胞と合体して胚をつくり、他の 1個はこの極核と合体して内胚乳をつくる。これを重複受精という。したがって内胚乳は核相3n(三倍体)であり、胞子体とも配偶体とも異なる独立した植物体であると考えられている。